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■ 池田健一エッセー ■


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■ 作者プロフィール ■

  
      池田健一
   (いけだけんいち)

昭和25年長崎生まれ。大学卒業後、いすゞ系会社の特装車両を手掛け、その後整備士、板金などの職歴を経て、現在長崎でキャンピングカー製作を手掛ける。ウッドを多用したナチュラルな内装を特徴としたフィールドシリーズが評判となる。趣味はスキンダイビング、トランペット、リズム&ブルースなど。文明批評と豊かな詩情を織りまぜた独特のエッセイを自作のホームページに掲載して、アクセスユーザーからの注目を集めている。

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Outdoorエッセー「答えは風の中」 池田健一(カスタムプロ ホワイト)

● vol.027 ドンの反乱

現在わが家では、ドン(柴犬)と、チョコ(ミニチュア・ダックス)の2頭の犬を飼っています。
ドンは昔からいる9歳の中型犬。屋外犬として、庭やテラスでつつがない毎日を過ごしていました。
ところが4年前、新参ものが仲間入り。
新しい家族となったチョコは小型犬ということもあり、室内犬として飼い始めました。
寒いときでもぬくぬくと室内で過ごすチョコと比べると、風が吹き込む犬小屋で寝ているドンは多少かわいそうに思えましたが、図体も大きく、毛も抜けやすいドンを今さら室内に入れるわけにもいきません。
そんなわけで、ドンとチョコの差別を解消することもなく、そのまま過ごしてきてしまいました。

この人間サマの都合が、あの事件をおこしました。

2年前、夏も過ぎようとしていたあの日…。
ドンさんは、家のガラス戸のすき間を鼻先でこじ開け、テラスから突然室内に乱入。アッという間に、部屋の中央にデーンと「うんこ」。そして、はじっこにしゃーしゃーと「しっこ」をかけまくりました。
「コラっ!」と外に連れ出しましたが、ドンは、怒られることを承知している“確信犯”のふてぶてしさ。そのときは、本当に憎たらしい犬だと思ったものでした。

ドンの反乱は、その後も何度か続きました。
カミさんと二人、なぜだろうと考えました。
「9歳にして痴呆が始まったのかしら…」
そんなことを話し合っているうちに、ふとドンさんの“あの時の目”を思い出しました。
あの時の目。
それは、ドンがガラス越しに家の中を覗いていたときの目です。
家族の笑い声が溢れる家のなかで、カミさんに頭を撫でられ、子供たちの膝に抱かれているチョコの姿を、ドンはずっと庭のテラスから見続けていました。
人と仲良くできるのはチョコだけ。
一緒にキャンプに連れていってもらえるのはチョコだけ。
池田家のファミリーとして認められるのはチョコだけ。

俺も連れてってくれ!
クルマにも載せてくれ!
家の中で一緒に遊んでくれ!
ドンは、言葉に表現できない自分の気持ちを“目”に託することで、必死にそう訴えていたのです。
彼のやりきれない心を表現した“あの目”を思い出したとき、
「区別をやめよう!」
そう家族で決めました。

その日から2年あまり。
ドンは今では毎日、家族の団らんのリビングに寝そべり、キャンプに出かける時には必ず助手席に鎮座しています。夜、焚火を囲むときも、彼はけむたそうな目をしながら、それでも満足げに私のそばに座っています。
夜がふけると、彼は私の寝床のすぐそばのゲージの中で、ぐーぐーいびきをかき、ときどき「クォーンクォーン」と寝言を言ったりして安眠をむさぼっています。私は、その騒音に耐えながら寝ることにすっかり慣れました。

ドンが入るようになった家を、「臭くなった」と文句を言ってた息子も、今では学校から帰ると、「ただいま、ドン」と真っ先に声をかけるようになりました。
毛が抜けて掃除が大変とくさっていたカミさんも、それ以来まめにシャンプーしてブラッシングをしているようです。

ドンとの新しいコミュニケーションを深めるようになってから、彼の顔つきが変わりました。
剣を含んだきつね顔から、穏やかなたぬき顔に。
心の変化がはっきりと表情に現れるようになりました。
人間が愛情を注げば、犬は人間サマ以上に豊かな感性を発揮するようです。

これからまたオートキャンプのシーズン。
さぁ、行くぞ! 秋のオートキャンプに。
助手席はいつもあけてますから、その時はドンさま、またよろしく!!