名車発見
● vol.001 ボナンザ26 1/2

「名車」といわれるための条件
キャンピングカーにおける「名車」とは何を意味するのだろうか。人気があって、販売台数も多いクルマのことをいうのだろうか。それとも、話題性が豊かで、ジャーナリストたちが誉め称えるようなクルマのことをいうのだろうか。
どちらともいえるし、どちらでもないような気がする。
私は、生まれたばかりのクルマはたとえ人気が高くても「名車」に成り得ないと思っている。どんなに素晴らしい性能に恵まれ、かつ、デザイン的に他車を圧倒するようなクルマが登場したとしても、デビューしたばかりのクルマが名車であるわけがない。たとえ専門誌の評論家がそのクルマを誉め称えたとしても、それだけで「名車」などと軽々しくいえるようにはならないはずだ。なぜなら、名車かどうかを決めるのはそれを買って、実際に使ったユーザーたちだからだ。
ある程度の年月を経てユーザー層が広がり、実車に接する人たちの数が増え、そういう人たちの口コミによって伝えられる評価が名車かどうかを決めるのだと思う。
だから名車としての評価が定まるまでには時間がかかる。そのかわり、一度そのブランドとしての名声が確立されると、それは不動のものとなる。逆にいえば、名車はマスコミの記事や宣伝の力によってつくることができないものなのだ。
そのような名車のひとつに、ボナンザ26・1/2というモーターホームがある。
このクルマが日本に登場したのが1993年。もう10年以上前のことになる。私が主宰する『RV&キャンピングカーガイド』で、当時このクルマを紹介するときには、必ず乗っていらっしゃるユーザーさんから感想を頂戴していた。実際に会ってお話を聞く場合もあれば、アンケート用紙を発送して書き込んだものを返送してもらう場合もあった。
しかし、意見を集める方法がなんであれ、ボナンザのユーザーはみなこのクルマを通して自分たちの「物語」を語ろうとしていた。

「室内を一目見て“これだ!”と思った。とにかく広いし、通路も幅がある。トイレ・シャワー室などはホテルなみの高級感がある。それまで別荘を買おうと思っていたが、このクルマを得てもう大満足」(1994年版・深田市郎さん)
「家族7人と犬2匹の大家族を満足させられるクラスCはこれしかなかった。子供部屋と大人の部屋を分けて使うこともできるため、2週間の長旅においてもこのクルマでは疲れるということが全くなかった」(2000年版・野村智己さん)
「3年連続して北海道に行っているが、漁港でのんびり2泊しているうちに漁師の人と仲良くなって北寄貝などをご馳走になり、以降交流が続いている。このクルマを年間60泊は利用している」(2002年版・内藤文明さん)
以上は、過去10年間の『RV&キャンピングカーガイド』ユーザーレポート欄からの抜粋である。もちろん紹介したのは、寄せられた感想のごく一部でしかない。
注目したいのは、ボナンザ26・1/2のユーザーは、みなこのクルマによって得た素晴らしい体験を一生懸命語ろうとしていることである。単に機能が優れているとか装備類が充実しているという感想ではなく、ボナンザを使うことによって新しい発見があり、人生が輝くようになった。彼らはみなそのように言おうとしている。
評論家の気の利いた一言などよりも、こういうユーザーの声の方が、キャンピングカーに関心を持っている人の心をはるかに動かすことはいうまでもない。そういう声を信じてボナンザを買った人が、実際に使って感じた感動を他者に伝えていく。その連鎖のなかで、同車は「名車」として揺るぎない存在を確立していったのだと思う。ボナンザ26・1/2というクルマは、逆にいえば、良いユーザーに恵まれた幸せなクルマであるともいえる。
他車にない贅沢感がこのクルマの魅力
では、このクルマが多くのユーザーの心を惹きつけた秘密はどこにあるのだろうか。
私はやっぱりこのクルマだけが持っている贅沢感がすべてだと思っている。外形フォルムから内装デザインに至るまで、このモーターホームには他のクルマにはない華やかさがある。それはバブル的な底の浅いゴージャス感とは別のものだ。長い時間をかけて育てられた本物の高級感といってもかまわない。
特に目立つのは、外装の造りだ。なかでも他車と一線を画しているのは素材である。車体の側面ボディには、航空機用アルミを使った外板の上に同じく航空機用のポリウレタン・エナメル塗装が施されており、FRPパネルで造られたモーターホームとはひと味違った、艶やかな光沢を湛えたボディが実現されている。外板色も、日本に導入されるものはチャコールグレイ、グリーン、ブルー、ゴールドなどにブライトホワイトのツートンを加えたものだったが、今年からレッドも加わり、それが華やかなこのクルマのキャラクターを一層引き立てることに成功している。
ボディフォルムも印象的である。リヤパネルがすとんと垂直に断ち切られているモーターホームが多いなかで、ボナンザのリヤパネルだけが中央部を境に上下が傾斜しており、それが26・1/2フィート(約8.2m)という長大なボディを凛々しく引き締めている。
内装にも、このクルマだけの独特の主張がある。特に、RL(リヤラウンジ)というモデルに採用されているリヤサイドのリビング空間が圧巻だ。ここには、他のメーカーでは不可能な、3方向に特大ウィンドウが設定されるという試みがなされており、そのリヤラウンジのソファに座って周囲を見回すと、モーターホームのレベルを超えたパノラマ感と開放感が得られるようになっている。
これほどの窓面積を確保するのは、実は強度的には大変なことで、逆にいえば、それだけこのクルマには補強対策が綿密に練られているということを物語っているといえよう。大きなバニティーミラーが採用されていることも、補強対策が万全であることのもう一つの説明になっているかもしれない。
シャシーそのものにおける贅沢感というのも見逃せない。ベース車にE450スーパーデューティーシャシーが採用されているのもこのクルマの特徴だ。これは、北米モーターホームで通常使われるE350スーパーデューティーを50p延長したホイールベースと、11p広げられたリヤトレッドを持ったもので、このシャシーによって実現される許容荷重は6,372kg。車両総重量が5t弱のボナンザにおいて、これは大きなアドバンテージとなる。さらに、フロントサスペンションには2.5p、リヤサスペンションには2.8pのスタビライザーが装着され、走りに対しては万全の備えが施されている。もちろんブレーキにも、このE450スーパーデューティーに関してはE350の上をいくものが採用され、このシャシーにかかる荷重に十分相応した素晴らしいブレーキ性能を保持している。
また、今年から新開発の5速ATミッションも採用され、高速域での燃費向上も大いに図られている。ボナンザというモーターホームの完成度の高さは、これらのシャシーの総合性能の高さに支えられているともいえる。
製造会社のこだわりがクルマの品質を左右する
以上触れただけでも、ボナンザには同車にしかない数々の魅力が備わっていることが分かる。しかし、その魅力というのは一夕一朝に磨かれたものではなかった。
1990年代初頭。ボナンザが日本でデビューした時代は、北米製モーターホームがあらゆるキャンピングカーの頂点として華やかなスポットライトを浴びていたときで、ボーンフリー、リージェンシーなどという高級車が人気を集めていた。
そのなかで、ボナンザというクルマの認知度は低かった。スタイルも、日本に導入される1991年以前のモデルは、どちらかというと野暮ったいものだったという。
しかし、当時ボナンザRVセールス(現・株式会社ボナンザ)を主宰していた比留間武社長は、このクルマこそは北米においてはもちろん、日本でも「世界一のクラスC」といわれるブランドに成長するだろうと見ていた。
理由は、それを製造しているビルダーの一途な“頑固さ”にあった。
ビルダー名はレイズィデイズ社。ウィネベーゴやジェイコ、フリートウッドといった量産メーカーとは違い、年間の生産台数は100台程度。生産規模だけを取りあげれば、北米のモーターホームビルダーのなかでは決して大きな会社ではない。
しかし、比留間社長がこのレイズィデイズ社の製品に注目したのは、その徹底した品質管理だった。
なにしろ当時から(もちろん現在でも)北米系モーターホームは、需要の急増に生産が追いつかない状態で、どこの会社でも従業員の多少の手抜きには目をつぶる状態。また、ドゥ・イット・ユアセルフの精神が徹底しているアメリカ社会では、製品の不備はユーザーが手直しするというのが当たり前となっており、完璧なまでの状態に仕上げられた工業製品を見慣れた日本人から見ると、フィニッシュが粗雑に見える製品もかなりあったのだ。
レイズィデイズ社は違った。自分の技術にプライドを持っている熟練工だけを揃え、時間がかかろうとも、コツコツと誠実に商品を仕上げていくという生産体制を堅持したのである。そして入念な出荷前検査を行い、収納庫の裏側に切り屑ひとつ落ちていてもパスできないほどの厳しい管理体制を敷いた。
その結果、工業製品のフィニッシュに敏感な日本人の目を通してみても、家具や装備類のディテールにおいて、寸分の狂いもなく緻密に仕上げられたモーターホームが生産されていたのである。
さらに同社は、そのことを実証するために工場に実車を見に来た人をモーターホームに同乗させ、スラロームテストに立ち会わせるということまでやってのけた。スラロームテストを行えば、補強が万全ではないモーターホームはすぐにきしみ音を出す。造りに自信のないメーカーでは、まずこのようなことを行わない。
比留間社長も、一度レイズィデイズの社長自らが運転するモーターホームに同乗して、この過酷なスラロームテストを経験した。レイズィデイズの社長は終始無言であったが、その表情は「このテストドライブを見ただけで、自社製品が並みのモーターホームと異なることが分かるだろう?」と言わんばかりだったという。
当然そのような造り方をしているメーカーでは、量産化がむずかしい。人気が出れば、生産量を増やしてさらに儲けたいと思うのが企業の常だが、レイズィデイズ社はその誘惑に打ち勝ち、自分たちの生産ペースを頑固に守り続けた。量産化してしまえば、現在の品質を維持することはできないと判断したからだろう。ボナンザのような手造りのモーターホームにおいて、量産を目指すためには人手を増やすしかないのだが、機械的な設備を増やすのとは違い、熟練工の数は限られしまう。ましてやボナンザのような高度な技術を要求されるクルマを仕上げる人間となれば、さらに数は少なくなる。
レイズィデイズ社は、時代に逆行しても、生産効率の追求やコスト減を模索する前に、まずクオリティの維持を優先しようとする姿勢を何よりも強く打ち出したメーカーだった。そしてその体制を維持するために、一切の代理店を設けず、工場直販システムを敷いているというのも同社の特徴である。
比留間社長は、そのレイズィデイズ社の一徹さに惚れた。そして、同社のモーターホームを日本におけるトップブランドに育てあげる代わりに、日本で販売するときの車名に、比留間社長の会社名である「ボナンザ」を与えてよいかとお伺いを立て、その承諾を得ることに成功した。
(株)ボナンザとレイズィデイズ社の友好関係はこの時から始まる。北米モーターホームの大型化が進行している現在、日本に導入できるサイズのクルマが激減しているなかで、ボナンザと同時期にデビューした北米モーターホームのほとんどは日本から姿を消した。
しかし、レイズィデイズ社のみは、このモデルのみ昔と変わらぬ姿勢で日本向けのナローボディモーターホームを造り続けている。このクルマに特別の思いを感じて支持し続ける日本のユーザーがなくならないからだ。現在、(株)ボナンザは、レイズィデイズ社が世界中で唯一認めた代理店となっている。
(株)ボナンザ
東京都武蔵村山市三ツ藤3-12-1
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http://www.bonanza.co.jp/
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