調べてみました
 

第2回目

【ディーゼル車規制はどうなっているの?


 ディーゼル車は今後新車登録できなくなる。東京都内は通行もできなくなる。そんな話題が飛び交う今日。ハイエースの1K−Z車のように、ディーゼルベースのクルマが隆盛を誇っていたキャンピングカーの世界で、この問題は深刻な不安を広げている。今ディーゼル車のキャンピングカーを持っているユーザーはどうなるのか。今後ディーゼル車のキャンピングカーを買った場合は将来どうなるのか。今回はJRVA(日本RV協会)などからも取材した情報をもとに、その問題を少し整理してみよう。

《NOx・PM法の正体》

 ディーゼル車の排出ガスが、環境に深刻なダメージを与えているという認識は昔からあった。特に、その排出ガスを構成する成分であるNOx(窒素化合物)とPM(炭素の粒子状物質)の二つが、環境汚染の元凶であるといわれて古い。ガソリン車の排ガス浄化に関してはすでに立派なノウハウを持っている自動車メーカーだが、ディーゼル車の有害物質(特に黒煙の原因であるPM)の処理は技術的にも難しい面があり、そのため規制の方も先伸ばし状態になっていたわけだ。
 しかし国がこの問題に関して、いつまでも放っておくことができないと判断した背景には、1980年代後半からの“RVブーム”がある。従来の商業トラックに加え、ディーゼルエンジン主体のRV車が急増したことが、ディーゼル規制に対して本腰を入れなければならないという考えの基礎となっている。
 そこでまず環境省の環境局中央審議会が答申をつくり、それをもとに、2001年の8月に「改正自動車NOx・PM法」が公布された。そして、国土交通省がそれをもとに新たな規制値と検査方法を設定したということが、今回の“ディーゼル問題”の幕開けとなった。

 この「改正NOx・PM法」が、利用者にとってなぜ大変な問題として受けとめられたかというと、それは規制値に満たないディーゼル車は、「特定地域内」においては、今年の10月1日以降より新車登録できないということが明記されており、しかも現行の小型ディーゼル車(3.5t未満)はほとんどそれに引っかかってしまうという厳しい内容だったからだ。キャンピングカーベース車として供給されているハイエース特装車も、カムロードのディーゼル車もすべてこの規制の対象から逃れることができず、それだけに業界内部でも深刻な問題として受けとめられた。

 では、「特定地域」とはどこか。これに関しては環境省のホームページにも掲載されており、『オートキャンパー』誌の5月号にも表が載っているので、そちらに譲るが、東京、名古屋、大阪のほぼ全域。埼玉県、千葉県、愛知県、三重県、兵庫県の大都市部と考えて間違いない。環境省の説明によると、「自動車の走行量および保有台数、そしてNOxとPMの排出密度が、全国平均の3〜4倍を超える地域」ということになる。
 交通量が増えれば、当然この条件を満たす地域も広がっていくわけで、今後この特定地域がさらに多くなっていくことは容易に推測される。
 これらの地域を「使用の本拠地」としている人は、今後はディーゼル車の新車登録も、継続車検もできなくなり、それに違反した場合は50万円以下の罰金が課せられるというから、考え方によっては厳しい情勢になったともいえよう。

《ディーゼル車はいつまで乗れる?》

 今回の「NOx・PM法」を見る限り、特定地域において、あえてこれからディーゼルベースのキャンピングカーを買おうという人は少ないと思われるが、問題は、すでにディーゼルのキャンピングカーを所有している人。「自分のクルマはどうなるのか?」という漠然とした不安を持つユーザーは多いだろう。
 そこでまず、特定地域内を「使用の本拠地」としているユーザーが、NOx・PM法が施行される今年の10月以降、いつまでディーゼルベースのキャンピングカーに乗り続けられるかを考えてみよう。
 どれだけ乗れるかは、ずばりそのキャンピングカーの初度登録日による。車検証にはみな登録を行った日付が明記されているが、今回の法律では、10年間の猶予期間が明記されているので、登録日から最低10年間は乗れる。
 詳しくは、初度登録がいつかによって、下記のように「使用最終日」が決められてくる。

●1995年(平成7年)10月1日から2002年(平成14)年9月30日の間になされたものは、「初度登録日から起算して、10年間の末日に当たる日以降の検査証の有効満了日」まで乗れる。
 実際的には、車検は1ヵ月前から取得が可能なので、もし2002年(平成14年)の9月30日に登録できれば、2014年(平成26年)の9月29日までは乗れるという計算になる。
●1992年(平成4年)10月1日から1996年(平成8年)9月30日の間に登録されたものは、2005年(平成17年)9月30日以降の検査証の有効期間満了日まで。
●1988(昭和63年)10月1日から1992年(平成4年)9月30日の間に登録されたものは、2004年(平成16年)9月30日以降の検査証の有効期間満了日まで乗れることになる。
●1988年(昭和63年)の9月30日以前に登録されたクルマに関しては、2003年(平成15年)の9月30日以降の検査証の有効満了日までと明記されているため、せいぜい乗れて後2〜3年というところだろう。 

 猶予期間の10年が長いか短いかは、ユーザーの考え方次第だろう。10年乗れても、もしその10年内に転売しようと思ったら、同じ特定地域内でのリセールバリューはどんどん減るわけで、資産的に考えれば明らかにデメリットは大きい。しかし、「安いディーゼル車を買って、それを乗り潰すまで遊ぶんだ」と割りきれば、そんなに問題はないのかもしれない。

《東京都のディーゼル規制で、問題はさらに複雑に…》

この“ディーゼル問題”をもう一つややこしくしているのが、東京都の「ディーゼル車通行規制」である。ちょうど同じタイミングで東京都から提案されたもので、この両者が入り乱れて、議論が大分混乱した。
 環境省…いわば国側が定めた「NOx・PM法」は、あくまでも特定地域内での登録を認めないというものだが、この東京都の「通行規制」というのは、東京都に入ってくるディーゼル車は、どこの地域で登録されようが、運行そのものを認めないというものである。東京都の定めた条例によると、「粒子状物質(PM)の排出基準を満たさないディーゼル車は、2003年(平成15年)10月より、都内全域の運行が禁止される」というもの。これも、今年になって都条例の環境確保条例に基づいて公布された。
 確かに、交通量がけた外れに多い東京での排ガス問題は深刻で、その大半は「地方から流入してくるディーゼルトラック」であるからして、思い切ってその元を断ち切ってしまおうという、いかにも石原都知事らしい果断な発想から来たものだが、問題をややこしくしているのは、その規制対象や猶予期間で、環境省と連動する部分と、それとは異なる部分が混じっていることだ。

 まず、ディーゼル車に許される猶予期間。環境省のNOx・PM法では初度登録から10年の運行は許されるが、東京都ではこれが7年となる。つまり、NOx・PM法では今後10年走れるクルマも、7年目からは東京だけは走れないということになってしまう。
 次に規制を受けるクルマの種類。これも環境省のNOx・PM法では小型ディーゼル車全般に及ぶが、東京都の条例では、同じディーゼル車でも乗用車は規制の対象から外される。
 さらに、規制の救済処置として、東京都では酸化還元触媒やDPFといった東京都が指定したPM減少装置を装着することが可能となるが、環境省や国土交通省ではそのような補助装置の装着に関して、現在のところ何の認可も出していない。これまで「触媒を付ければディーゼル車もOK」という噂が流れていたが、そのやり方では、東京都の条例をクリアできる可能性はあったとしても、国のNOx・PM法に関しては有効性を持たないというのが現状だ。
 また、現在開発が進んでいるといわれる酸化還元触媒やDPFという装置に関しても、あくまでも大型トラックや路線バスといった事業用車両を対象としたもので、キャンピングカーベースとなる小型ディーゼル車には及んでおらず、仮にその装置を個人で取り付けたとしても、それによって車検まで通すとなると、面倒な検査手続きや高価な検査費用が必要となるといわれている。

 ここまではっきりした条例を打ち出してきた東京都だが、さてその「通行規制」をいかなる形で実現しようとしているのか。その具体的は方法はいまだ明瞭になっていない。JRVAでも東京都に対して、メールを通じて質問をしてみたとのことだったが、「現在まだ具体的な規制方法は決まっておらず、仮に決まったとしても公表することはないかもしれません」という返事だという。ただ、環境Gメンなどを配置して自動車の登録ナンバーなどをチェックし、違反している車両には罰則措置を与えるなどという話はささやかれている。条例違反を恒常的に繰り返す悪質なドライバーには、NOx・PM法と同じく50万円以下の罰金が課せられるという。
 ちなみに、大手の流通会社では現行のディーゼル車をLPG車に替えたり、東京近郊に広いターミナル基地を設け、都内で流通する物資を運ぶ場合はガソリン車に積み替えるなどという処置が、急速に進んでいるという話も聞く。

《将来はやはりディーゼルの時代?》

 いずれにせよ、日本においてディーゼル車をベースとしたキャンピングカーは、現在の基準値をクリアできる新しいディーゼルエンジンが開発されるまでは、しばらく「お休み」ということになりそうだ。
 こういう日本の動向に関して、ヨーロッパではむしろ省資源、地球温暖化対策としてディーゼル車に高い評価が与えられているという事実を指摘する声も多い。確かにヨーロッパではコモンレールなどの新しい技術が開発され、ハイパワーで静粛性に富み、省燃費を誇るエンジンが普及している。ヨーロッパでは、次世代のクルマとして、新しいディーゼルエンジンを載せた車両に期待がかかっている。
 そういう議論がある一方、日本とヨーロッパのエンジン技術を同じ土俵では語れないという指摘もある。それは供給される原油の質そのものが異なるからだという。原油は、その採掘される場所によって硫黄分が多いものと少ないものに分かれ、ヨーロッパに供給される原油が比較的硫黄分が少ないのに比べ、日本に供給される原油は硫黄分が多く、これを除去するとなると相当な技術とコストが要求されるという意見だ。この硫黄分が、排出ガスに混じる有害物質の元凶となることはいうまでもない。
 また、ヨーロッパで進められているディーゼルエンジン規制というのは、省資源や地球温暖化防止という意味合いが強いが、日本がメーカーに要求している規制というのは、排ガス浄化という意味合いが強く、ディーゼル・エンジンに求めるものが根本的に異なっており、同じ「ディーゼル規制」といっても同列には考えられないという意見もある。
 その日本においてもトヨタ、日産、三菱などでクリーンで省燃費な新型ディーゼルエンジンの開発がようやく軌道に乗ってきたという話もある。
 いずれにせよ、ディーゼルベースのキャンピングカーを使っている人たちには冬の時代のように感じられるだろうが、これもクリーンな環境を創造するためのひとつの試練だと思って冷静に対処したいものである。