サムライ列伝
● vol.001 ロッキー取締役 仲 康秀さん
キャンピングカー業界にはサムライが多い。この場合「サムライ」とは何を指すのかという問題は大いにあるが、まぁ、とりあえず「自分のスタイルを崩さぬ信念の人」ぐらいの感じで受けとめていただきたい。スタイルといった場合、たいていの場合は「仕事に対する姿勢」を指すのだが、ロッキーの仲社長に関しては、ずばり遊びだ。生きていて何が楽しいのか。何をしているのが一番面白いのか。そんな発想で日の出を拝み、日没を愛で、星を友としているという感じの人である。その遊びの精神がストレートに発揮されたのが、今年オープンした横浜展示場だ。西部劇に出てくるアメリカの田舎町のようなアーケードの下にショッピングモールが連なり、あたかもテーマパークのごとき様相を呈する。輸入雑貨から子供用ドレスショップ、果てはペットショップまで。およそ従来のキャンピングカー販売店では味わえない雰囲気の“スモールタウン”が出現している。集客効果を狙ったというより、要は自分が遊んでみたかった、というのが仲さんの弁だ。ゲートに入ってギョっとするのは、鮮やかなイエローにペイントされたクライスラー・プリムスプロウラーのホットロッド仕様。それが商品のキャンピングカーより目立つ位置に鎮座ましましている。なんと仲さんの通勤車だ。こんなクルマで仕事場に来れる神経が、すでに「遊びのスタイル」を貫くことに命を捧げたサムライであることをよく物語っている。茶髪で、おヒゲも赤い仲さん。見てくれからして、吊革につかまって通勤電車に乗っている人種ではない。
もとはハーレーライダーだった。ハンドルを天高く突き上げたチョッパー仕様。『イージーライダー』に憧れた世代だ。仲間を引き連れてのツーリング三昧。夜はテントを張って、シュラフにくるまりながらの酒盛り。そのうちツーリングそのものよりもキャンプの方が面白くなる。仲さんのテントキャンプの時代が始まる。そして運命的なキャンピングカーとの出逢い。初めて買ったキャンパーはAtoZのキャブコン、アクシスだった。仲さんがこの業界に近づく第一歩が踏み出される。次が「名車」として名高いAtoZのアラモ。憧れのキャンピングカーを手に入れてはみたが、キャンプ場に行けばさらに大きな輸入車をたくさん見ることになる。ボーンフリー、サンフライヤー、ドルフィン3150、フェーダー、レシャロの時代。最初の頃は、そういうクルマのオーナーがみな自分とは給料も階層も異なる「先生」たちに見えて、近寄りがたかったという。
そのうち、自分で国産キャンピングカーや輸入モーターホームを売るようになり、かつて人種が違うと思った輸入車のお客さんとも多く接する機会を得る。「なぁーんだ。話してみれば、みな気さくな普通の人じゃないか。ただ遊びが好きなだけなんだ」。遊びならこっちに任せておけ! 仲さんはキャンピングカーを使った遊びの楽しさを、自分の経験からプレゼンテーションすることよって、どんどんお客さんの気持ちを引きつけていく。
仲さんのエライところは、常に気に入ったキャンピングカーを自分で所有して、フィールドを駆け回りながらしっかり遊んでいることだろう。アラモの後は、ギャラクシーU、タイガーGT、自社ブランドのキングスターと続く。今は、25フィートのエアストリーム(クラスA)が愛車だ。「さすが25フィートのクラスAは初めて。最初は怖くて、社員から運転のコツを習いながら練習したんだ。1時間で慣れたけど、いや、冷や汗の連続…」そんな飾らないコメントがよどみなく出てくるところが仲さんの魅力だ。自分の展示場をキャンピングカークラブのイベント会場にも提供する。無償でビールも用意し、椅子テーブルも貸し出して、ジャグジーやシャワーも解放する。自分もお客さんと一緒に飲んだり、食べたりできるだけで楽しい。だから、そういうところでは「商売」しない。「今楽しみにしているのは、アメリカで買った72年型コーニッシュのコンバーチブル。ウオールナットもひび割れ一つないし、コノリーレザーもピカピカ。これが来るのが待ち遠しくて…」「そのうち、ここでライブをやるよ。ロックやブルースの好きな仲間が多くて。好きな音楽を聞いていると、本当に幸せ」仲さんの場合は、そういう遊びのプランが全部キャンピングカーとセットになっている。遊びのためのクルマは、やっぱり遊んでいる人から買うのが一番確実かもしれない。ふと、そんなことを思った次第である。(町田)

