サムライ列伝
● vol.005 インディアナRV 降籏貴史 専務
不況は怖くない
景気停滞、デフレ、大不況など、どこを向いても気分が委縮するような時代に、「不況は怖くない」と平然と言い切る経営者もいる。「不況だからこそ、ユーザーが本物を見抜く力をつけている」というのがその理由だ。経営者が、それほど自信を持てる商品とはいったい何だろう。ポルト6、ヴィテッセ7、クナウス550。
トレーラーファンにはすぐピンとくるはず。インディアナRVの商品群である。それを手掛ける降籏(ふりはた)専務は、自ら企画したトレーラーを愛車で引っ張り、休日には家族でアウトドアライフを満喫する実践派の開発者としても有名だ。RVショーや野外イベントにはどこにでも顔を出す。数多い内外の出張も精力的にこなす。業者仲間の会議なども欠かさず出席。にもかかわらず、オフは自分だけの時間をトレーラーの中で満喫する。このバイタリティーはどこからくるのか。
「好きだからですよ」
心底トレーラーが好きと言い切るその表情には全く迷いがない。2年前からヒゲを伸ばした。「サムライ列伝」にご登場願うにふさわしい戦国武将の面がまえである。「俺、本当にアウトドアが好きなんだよ!」というおおらかな正直さがストレートに風貌に表れている。
世界を放浪して得た自信
19歳のとき、ヒッチハイクでロシアからヨーロッパをまわった。五木寛之の『さらばモスクワ愚連隊』に憧れた世代。ナホトカ、ハバロスク、モスクワを経由して、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、オーストリアを旅する。行き帰りの飛行機代だけ確保してあとはヒッチハイク。もちろん言葉も分からない。寝泊まりは安いユースホステルか野宿。財布や下着を盗まれるというアクシデントを何度も切り抜けながら、青年降籏はアウトドア寄りの視線で、北ヨーロッパの風景を自分の脳裏に刻みつけた。
「結局その旅行が自分に、放浪の楽しさと自立心を教えてくれましたね」
今の自分があるのも、無銭旅行で海外を回った自信があるからだという。
旅の途中で生涯のパートナーともいえる無二の親友ができる。同じようにヨーロッパを旅行していた日本人学生の渡部氏。ウィーンの路上で偶然口をききあって意気投合。その彼が今ある会社の共同経営者となる。
ヒット商品連発の秘密
スタートは、ピックアップキャビン(キャンピングボックス)の輸入だった。アメリカのシャドークルーザー社と契約して、日本仕様のピックアップキャビンを設計しそれを手掛ける。しかし元々トレーラーが好きだった降籏氏。シャドークルーザーの社長に持ちかけて、日本向けの小型トラベルトレーラーの開発に成功する。伝説となった名機「インディアナTR-4」の誕生だ。
これが売れた。
トレーラーがまだお金持ちの優雅なアウトドアツールと見なされていた時代に、求めやすい価格と魅力的な装備満載したTR-4は大ヒット。コンパクトさを感じさせない室内造形の巧みさも多くのユーザーを魅了した。人気を反映して売上げも好調に推移。シャドークルーザーの商品を扱う販売店としても、全米のディーラーを押さえてナンバーワンの地位を獲得したこともあるという。
その後インディアナV2、V2-L、ファントム5などのヒット商品を次々と飛ばす。1997年からはヨーロッパものも手掛け、スイフト5などの英国製品を加え、さらにポルト5、6、7などのポルトガル製品に力を入れていく。そういった意味で、インディアナRVはアメリカ・トレーラーとヨーロッパ・トレーラーの両方のノウハウを持つ珍しいショップだ。
現在扱っている商品もポルトガル製、ベルギー製、英国製、ドイツ製と実に広範に渡っているのが特徴。この7月にはドイツの名門ビルダークナウス社の正規代理店の認定書も取得し、海外からも日本のトレーラーディーラーの第一人者として評価される恰好になった。インディアナ製品の人気の秘密な何だろう。
ひとつにはその開発姿勢だ。新しい商品を開発した後に降籏氏は必ずそれを野外に引っぱり出して試す。それも自分一人で使うのではなく、家族を寝泊まりさせ、ファミリーで使った時の使い勝手を検証する。現在の主力商品であるポルト6は、そうやって蓄積した自分自身のデータから編み出された“究極の”レイアウトだという。そういう降籏氏の実体験に基づいた商品開発に信頼感を寄せるユーザーは多い。ユーザーが集まるキャンプイベントにも積極に参加し、自社、他社の製品を問わずトレーラーに関する悩み事ならどんなことでもオーナーの相談に乗る。RVショーでは、見学者の些細な質問にも丁重に答える。仕事熱心…でもあるわけだが、トレーラーに関する話題なら1日中しゃべっていても楽しいのだ。
トレーラーは“夢の隠れ家”
いったいトレーラーのどんなところが、降籏氏の気持ちをとらえたのか。
「男の隠れ家だね、あれは…」
幼少の頃仲間と一緒に山に入って、枯れ木を組み立てて小屋を作ったという。ままごとじみた生活雑貨や玩具を収納する場所を室内に設計し、戸外に広がる大自然の風景を飽きずに眺めて遊ぶ。実社会の決まり事や煩わしい日常生活から切り離された「自由な空間」。ピュアな夢を無邪気に飛翔させてくれる「至福の世界」。トレーラーで過ごす時には、少年のとき味わった「夢の隠れ家」がいつでも脳裏をよぎるという。「10年後ぐらいに実現したい夢は?」と尋ねると、「フル装備で150万円を切るトレーラーの開発!」という言葉がすかさず口からこぼれ出た。日本でもトレーラーがイギリス並み(登録台数50万台)に普及すれば、それも可能だとか。
「トレーラーが増えるということは、僕のような好き者の仲間が増えるということ。それが楽しみでやっているような仕事です」と、さりげなく語る。
自分の商売よりもまずトレーラーの普及が優先。商売はそのあとについてくる。それが降籏氏の変わらぬ姿勢だ。そんな降籏氏を、ファンはいつしか「ミスター・トレーラー」と呼んでいる。(町田)
インディアナRVトレーラーパーク
神奈川県平塚市田村1737-1
0463-53-2700
http://www.netlaputa.ne.jp/~indiana/

