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ひとくちJournal

●vol.007 ついに登場! シニア向け「くるま旅」の実践書


本格的なキャンピングカー旅行書の誕生


 団塊世代が定年退職を迎える2007年が、間近に迫ってきた。
 それに呼応するように、定年後の夢を「キャンピングカーを使った日本一周」に求める人たちが確実に増えている。

 しかし、その人たちに向けた「実践指南書」というのものは皆無に等しかった。
 なぜなら、そのような本は作りようがなかったからである。
 まず、キャンピングカー関係のメディアのスタッフに、定年退職を迎えるような年齢の人間がいないため、企画のツボが分からない。
 また著者として、シニアの長距離旅行というテーマで実践的な指南を行える経験者が少ない。

 そのため、「シニアのキャンピングカー旅行」というテーマは、キャンピングカー専門誌がスポット的に取りあげることはあっても、書物として体系的にまとめたものが見当たらないのが現状だった。

 このたび山本馬骨さんが書かれた『くるま旅くらし心得帖』という本は、業界としても初の本格的なシニア向けキャンピングカー旅行の指南書である。

1ヶ月以上の旅をこなすためのノウハウがみっちり


 この本が評価できるのは、「長期旅行」の本質的な部分を、ナマの言葉で率直に語っているところにある。
 「長期旅行」というと、多くの人は果たしてどのくらいの期間を想像するだろうか。
 私もキャンピングカーでの長期旅行を経験しているが、サラリーマンであるために、せいぜい長くても1週間から10日。

 しかし、話が1ヶ月以上ともなると、10日ほどの“長期旅行”とは大きく様相が異なってくる。ましてや2泊3日ぐらいのキャンピングカー旅行では想像もつかないような場面をいくつも想定しなければならなくなる。
 そこを突いたのがこの本だ。

 たとえば洗濯物はどうするのか。
 10日ぐらいの旅なら、1日ぐらいどこかのキャンプ場のランドリーを利用すればいいだろう…ぐらいの感覚で、せいぜい3〜4日分ぐらいの着替えを用意するのが関の山。
 しかし1ヶ月ともなると、そうはいかない。1ヶ月分の着替えを用意するなど、限られたキャンピングカーの収納力では無理なことだ。
 その場合どうするか。

 また、食事はどうするのか。
 常に自炊できる環境のもとに宿泊できるとは限らないキャンピングカーの旅では、外食や簡易食に頼らざるを得ないことも多くなる。
 しかし、それでは食事のバランスも乱れ、コストもかさむようになる。
 では、どうすればいいのか。

 この本は、そのような1ヶ月以上の長期旅行で発生するさまざまな問題を、著者がどのように解決してきたか、その貴重なトライ&エラーの成果を綴ったノウハウ集なのである。
 多くの団塊の世代は、いま現役最後のサラリーマン生活を全うしているところだろうから、1ヶ月以上の旅を具体的にイメージすることができないだろう。
 そこで、この先達者の貴重なアドアイスが初めて生きてくることになる。

なぜクルマ旅が素敵なのか


 この本は、定年退職を間近にひかえたキャンピングカー初心者を想定して書かれている。
 したがって、キャンピングカーの選び方、宿泊場所の探し方、長期旅行に必要な携行品、現地における情報の収集方法など、ビギナーが素朴な疑問として知りたがっているテーマが中心となっている。

 そういった意味で、キャンピングカーのベテランにとっては、「今さら…」と思えるようなページもあるだろうし、また旅のスタイルが異なる人たちからは異論の出てくる箇所もあるだろう。

 しかし同書では、今までのキャンピングカー旅行のノウハウ本にはけっして書かれたことがない、ある一点が強調されていることを見逃してはならない。

 それは、「シニアにとって、くるま旅はなぜ良いのか?」という根本的な部分への洞察だ。
 キャンピングカーの旅がなぜ楽しいのか。
 その旅にはどういう意義があるのか。

 ノウハウ書という体裁を採りながら、実は本書の核となっているのはその部分に対する省察なのだ。

 ここから先は、著者自身の言葉を引用しよう。
 この本は、まさに語録として収集しておきたくなるような珠玉の格言に満ちている。
 題して「馬骨語録」

馬骨語録     


《退職後の安堵感はすぐ消える》

  仕事がなくなると、しばらくの間は煩わしさから解放された安堵感のようなものに満たされる。しかし、それはほんの短い間に終わる。そして、今度は仕事をしていないという不安感にとらわれる。
  何十年もの長い間、同じような仕事に取り組んでいれば、人は仕事に対してある種の離れがたい執着のようなものを持つものだ。
  それが断ち切られたという思いに打ちのめされてしまうと、人は老いるのも早い。認知症が忍び寄ってくるのも、そんな精神状態のときだ。
  だからこそ、仕事をしている間に、退職後に打ち込めるテーマを見つけておくことだ大事だ。

《旅の妙味は出会いにあるが、それは人との出会いだけに限らない》

  早く老いるのを防ぎ、心身ともにフレッシュな状態を維持する最も有効な手段は旅だ。なぜなら、そこには出会いがあるからだ。
  出会いは人間との出会いとは限らない。見るもの、聞くもの、触れるもの、味わうもの、嗅ぐものなど、五感を感動させるすべての出来事が出会いである。
  なかでも、キャンピングカーの旅だからこそ実現できる出会いというものがある。
  たとえば、くるま旅では、朝起きて窓を開けると、昨日は気づかなかったまったく新しい景色が広がっていることがある。
  夜は暗闇に閉ざされ、しかも明け方は霧に覆われてまったく見えなかった周辺が、朝日が昇ったとたんに、真っ白な雪を冠した山を突然浮かび上がらせて、車内にいる人間を驚かせたりする。
  その予想もしなかった雄麗な岳峰に仰ぎ見ることも、また出会いである。

《自分の「殻」から出てこそ、初めて人と会うことができる》

  人と真の出会いを実現するには、まず自分の「殻」から抜け出る必要がある。そして、同じように「殻」から出た相手と接することによって、本当の出会いが生まれる。
  しかし、日常的なつきあいの範囲では、自分も相手もその「殻」から抜け出すことが難しい。ましてや、人間の「殻」というのは、歳をとればとるほど、その頑強さを増していくものだから、ますます本当の出会いを得る機会も狭まっていく。
  だが、くるま旅の場合は、意外と出会った者同士がいきなり「殻」を破って交流できる場合が多い。
  お互いの「殻」から抜け出して心を交流させたときに、初めてお互いの心が沁みあい、滲みあう。

《不安と期待を同時に楽しむのが「くるま旅」》

  人間が家で生活する場合、必ず衣・食・住を核とする場がどんな条件であっても一応は保証される。
  しかし、くるま旅では、この衣・食・住の要素のどれかが、毎日必ず変わる。場合によって、そのどれかの要素が極端に貧弱にならざるを得ない日を迎えることもある。
  そういった意味で、くるま旅には不安と期待がいつも背中合わせで同居している。
  しかし、その不安と期待の両方を同時に楽しむのが、くるま旅の極意というものである。

《いつも夫婦一緒に行動していると、かえって長期旅行はできない》

  くるま旅は、夫婦が仲良く旅をするものと思われがちだが、長旅をしていれば、2人の考え方がいつでも同じになるということはない。お互いに毎日顔をつき合わせていると、相当に飽きが来て、嫌になってくることもある。
  その場合、いつも一緒に行動をとるという考え方は、くるま旅を台無しにしかねない。
  自分たちの場合は、たとえば観光地などでは、一緒に同じものを見ることにこだわっていない。リミットの時間を決め、夫婦別々に見たいものを見る。そして、所在の確認は携帯電話で取り合う。
  夫婦といえども、1人の人間として個人に戻ったときは、本人たちが好きなことを好きなようにやるのが当然だ。
  お互いが自由に生きる時間を尊重し合ってこそ、かえって強い信頼関係が生まれる。

《くるま旅のテーマに、グルメを掲げてはならない》

  旅に出ると、解放感も手伝い、つい美食、飽食に傾きがちである。
  しかしグルメの旅は、くるま旅ではあまり掲げてはならないテーマのひとつだ。
  なぜなら、短期間の旅行ならいざ知らず、長期旅行となると、グルメを志向していれば必ず健康と予算に問題が生じてくるからだ。
  特にコレステロールや中性脂肪等に関して注意を受けている人は、快食の意味を取り違えてはならない。
  健康に留意して、最低でも1日1食は自分で調理して食べることが肝要。それも、体調管理を考えて、繊維質を含んだ野菜等の摂取を重視した食事を心がける必要がある。

《眠くなるまで起きていればいい》

  くるま旅では、毎日の生活環境が変わるので、疲れているのに眠れないということがよくある。
  しかし、それを気にしていても始まらない。
「眠くなったら寝る。眠くないときは寝ない」。
  そう思って悠然と構えていればいいのだ。快眠は、眠くない状態では決して実現できないからだ。
  だから逆に、眠くなったときは、夜でなくても、ほんの少しでいいからクルマを止めて仮眠する。
  一般道の道の駅や高速道路のサービスエリアなど、どこもでも気楽に仮眠できるキャンピングカーのメリットを活かさないという手はない。

《「損か得か」より「良いか悪いか」で判断する心が大切》

  その地域の生きた情報を得るためには、地元の方とよりよい関係をつくることが何よりも有効な手段となる。
  特に一ヵ所に長期に滞在するときは、地域の人々との交流はますます大切だ。
  その場合に気を付けなければならないことは、滞在するときのマナーだ。
  ゴミの不法投棄などはもってのほかで、「来たときより美しく」という心がけで、クルマの周囲に散らばる他人のゴミまで掃除するくらいになって、初めて地域の人も、気持ちよく受け入れてくれるようになる。

  昨今のマナーにルーズなキャンピングカーオーナーの実態を見ると、本当に嘆かわしい気分になる。
  どこか物事の判断基準がズレてきているような気がする。

  ものごとの価値判断をするに当たって、二つの物差し(基準)がある。ひとつは「損か得か」。
  もう一つは「良いか悪いか」。
  今の世の中は「損か得か」という価値判断が優先されて「良いか悪いか」という物差しが軽視されている。
  法律というのは、「良いか悪いか」の価値判断のできる人には無用のものであって、ひたすら「損か得か」を求める人が多くなるにつれて用いざるを得ないルールのような気がする。


  以上、山本馬骨さんのご本から、著者の主張やキャラクターが色濃く出ていそうな部分を抜き書きしてみた。
  キャンピングカーに興味を持っている人だけでなく、定年退職後の人生を模索中の多くの中高年に読んでもらいたい本である。 (町田)



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